本学の教員が「地域社会学会奨励賞」を受賞しました。

 本学の野坂真准教授の著作、「地方社会の災害復興と持続可能性――岩手県?宮城県の東日本大震災被災地からレジリエンスを再考する」(晃洋書房刊)が、「第17回地域社会学会奨励賞(個人著作部門)」を受賞し、表彰式が2024年5月11日に行われました。

 地域社会学会は、1975年に発足し、主として都市社会研究者や農村社会研究者が参加し、地域社会の諸問題に接近し、かつ経験科学、実証性に根ざした研究を行う目的で組織化された学会です。同学会による「地域社会学会奨励賞」は、地域社会学をはじめ広く地域社会研究において優れた成果をあげた会員に対して、これを顕彰し、学会活動のさらなる発展に寄与することを目的とするものです。

《野坂真 准教授のコメント》
 本書は、東日本大震災の津波災害で大きな被害を受けた岩手県大槌町、宮城県気仙沼市にて2011年より約10年間続けてきたフィールドワークの成果をまとめたモノグラフを基に執筆したものです。被災前から人口減少と経済停滞が顕著になっている社会では、被災前の人口や経済状況に戻すという復興目標を立てたとしても、それを達成するのは困難です。そこで本書では、地域が本来持つ回復力(レジリエンス)を活かした持続可能な復興が必要であると主張しています。
 日本の災害社会学だけでなく、国際的なレジリエンス論や内発的発展論なども参考にしながら、地域が本来持つ回復力が、その地域においていかに成り立っており、また災害によっていかに再構築されていくかを分析するための視点を示すことができたと考えています。また、持続可能な復興をもっとも根本で支えるのは、被災当事者の心の復興であるとも主張し、社会学があまり扱ってこなかった心の復興と地域復興との接続にも挑戦しました。
 能登半島地震が発生し、青森県も大きな被害を受けると想定される日本海溝?千島海溝沿い地震の発生も切迫している昨今、地域が本来持つ回復力を活かした持続可能な復興や、それに向けた準備はさらに多くの地域で必要とされることでしょう。末筆ながら、選考委員の皆様、そして、大変な思いをされている中、ときに心情を言葉にしていただき、ときに行動をともにすることを許可していただいた地域の皆様にお礼を申し上げます。

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